Inconel 740Hは、先進超々臨界(A-USC)発電所における700°C~760°Cの高温・高圧環境に対応するために設計された、ニッケル基析出硬化型耐熱合金です。
化学成分(質量パーセント):
元素 | 含有量(質量%) |
---|---|
ニッケル(Ni) | 残部 |
クロム(Cr) | 23.5~25.5 |
コバルト(Co) | 15.0~22.0 |
アルミニウム(Al) | 0.2~2.0 |
チタン(Ti) | 0.5~2.5 |
ニオブ(Nb) | 0.5~2.5 |
鉄(Fe) | ≦3.0 |
炭素(C) | 0.005~0.08 |
マンガン(Mn) | ≦1.0 |
モリブデン(Mo) | ≦2.0 |
ケイ素(Si) | ≦1.0 |
銅(Cu) | ≦0.5 |
リン(P) | ≦0.03 |
硫黄(S) | ≦0.03 |
ホウ素(B) | 0.0006~0.006 |
この合金は、析出硬化(γ’相:Ni₃(Al,Ti,Nb))によって高い強度を得ています。
物理的性質:
密度:8.05 g/cm³
融点範囲:1288~1362°C
電気抵抗率:1.168 μΩ·m
機械的性質(常温):
降伏強さ(0.2%オフセット):約724 MPa
引張強さ:約1066 MPa
伸び:約23.7%
700°C~800°Cの高温下でも、高い強度と優れた延性を維持します。
耐食性:
Inconel 740Hは高温環境において、優れた耐酸化性および石炭灰腐食耐性を示し、石炭火力発電所などの過酷な条件下でも使用可能です。
加工・溶接性:
この合金は、熱間および冷間加工において良好な加工性を持ちます。
溶接においては、母材と組成の合ったInconel 740H用溶接材料を使用し、主にTIG溶接(GTAW)、パルスMIG溶接(p-GMAW)、およびホットワイヤTIG溶接(HW-GTAW)などが用いられます。
用途分野:
高温・高圧下での優れた性能により、Inconel 740Hは先進超々臨界圧発電所におけるボイラーチューブ、過熱器、再熱器などの重要部品に広く使用されています。
まとめ:
Inconel 740Hは、優れた高温強度、耐食性、加工性を兼ね備えた高性能ニッケル合金であり、先進超々臨界発電設備における理想的な材料選定として注目されています。