概要:
本稿では、C17200析出硬化型ベリリウム銅基合金の切削加工技術について、切削特性、工具選定、工具の幾何学的パラメータ、切削条件、切削液の選択、フライス加工およびドリル加工など多角的な視点から、近年の加工経験を紹介します。これらの技術的手法と経験を通じて、C17200は石油探査用の計測器に広く応用されるようになりました。
C17200は析出硬化型ベリリウム銅合金で、固溶化および時効処理後に高い硬度、強度、弾性限界、疲労限界を持ち、耐食性、導電性、非磁性にも優れています。低温・高温・高圧・酸性環境でも長寿命を維持でき、特に過酷な油井環境で使用される測井装置に適しています。
加工硬化
ベリリウムの影響で急激な加工硬化が起こり、硬化層は0.007mm以上になるため、鋭利な刃物と適切な切込み深さが必要です。
切削力が大きい
硬度38~44HRCに達し、切削時の塑性変形が大きく、大量の切削熱が発生します。冷却のために切削液が必要です。
剛性が低い
弾性係数128GPaで鋼材の60%程度。加工中にたわみやすく、しっかりとした固定が必要です。
工具摩耗が早い
表面に耐摩耗性酸化膜が形成され、また高温・高切削力・高変形のため、工具が磨耗しやすいです。適切な切削速度と送り量の選定が不可欠です。
C17200の切削には超硬合金工具(YG6、YG8など)が最適です。高速鋼も使用可能ですが、耐熱性と精度で劣ります。YT系列工具は素材との親和性が高く、摩耗が進行しやすいため、YG系列を推奨します。
刃形状:刃先の円弧半径 rε = 0.1~0.8mm のアール刃が理想。
ネガティブチャンファ:刃先強度を高め、破損防止・放熱効果を上げる。幅 bγ1 = (0.3~0.8)f、角度 γo1 = -10°~-5°。
チップ形状:切りくず排出を改善するため、チップブレーカー(溝底円弧半径 Rn = 2~7f)を使用。
前角 γo:5°~10°程度が適当。刃強度と放熱面積のバランスを取る。
後角 αo:6°~8°。過小だと摩擦増、過大だと刃先脆弱になる。
主・副切削角 κr/κ’r:主切削角は45°~75°、副切削角は5°~10°。
工具傾角 λs:荒加工では-10°~-5°、仕上げ加工では0°が推奨されます。
切削速度 vc:100~200 m/min。高すぎると工具寿命が低下し、低すぎると効率が悪化。
切込み深さ αp:0.05~3mm。剛性が確保されている条件で深めの加工が可能。
送り量 f:0.1~0.15 mm/r が推奨。加工効率と表面粗さのバランスを考慮。
主目的は冷却と潤滑。C17200は切削熱が非常に高いため、切削液は不可欠です。
水溶性乳化液は冷却性能が高いが、硫黄分によって表面に斑点が生じる可能性あり。
**鉱物油 + 3~7%のラード(豚脂)**は冷却性能はやや劣るが、潤滑性が良く摩擦・熱発生を抑制。
高硬度材料のため、刃先の鋭さと耐衝撃性が求められる。
超硬フライスカッターの使用を推奨。
非対称順フライス法が効果的で、摩擦軽減と工具の安定化に寄与。
切削液の併用により表面粗さと工具寿命が改善。
高速鋼ツイストドリルを使用。
スパイラル角:29°、先端角:118°、ウェブ角:12°。必要に応じて特殊な研磨が有効。
低切削速度で安定した切削を行い、切削液を使用することで切りくず排出と工具寿命の向上が可能。
加工硬化を避けるため、切削速度と送り量は一定に保つことが重要。